就活をされている学生さんや、新卒転職を考えておられる方は、大手外資系企業のSE職(システムエンジニア)とはどんな仕事で、ブラックな職場なのかどうか、疑問に思われている方も多いと思います。
大手外資系IT企業(IBM)で30年間、その内、10年以上をSE系のセクションのマネージメントとして経験してきた私が、SEという仕事と職場を解説いたします。
この記事を読んで欲しい方とその期待できる情報効果
大手IT企業のSEっていう仕事っていってもなかなか経験者でもない限り想像が付きにくいと思います。理由は、あまりにも仕事の種類が多岐にわたるからです。
この記事では、大手IT企業(IBM)のマネージメントに10年以上勤務した経験から、SEの仕事の種類とそのブラック、ホワイト度合い、および、仕事としての将来性、向き不向きに関して解説します。
職場次第で、大きく変化するSE職ですが、就職・転職の参考に大きく貢献することは、保証いたします。
SE(システムエンジニア)って何をする職場?どんな仕事?
SEの仕事とは、社内の技術職の中で、大きく分別すると、研究/開発エンジニア以外の全てのお客様に関係する技術職と言えると思います。
なぜお客様関連のエンジニアなら、Customer Engineer(CE)と呼ばないかというと、IBMでは、もともとCEはハードウェアの修理の仕事をする人をよんでいたから、SE(システムエンジニア)と呼ばれたと思われます。CEがハード、SEがソフトウェア関係という分け方も、過去には、ありました。
SEの仕事は主として対応するお客様により、以下のカテゴリに分類されます。
- インフラSE (サーバー、ネットワーク等の設定、メンテナンス)
- SI SE(お客様のアプリの関連の開発、設定、メンテナンス)
- 社内SE (社内のシステムやアプリの開発、設定、メンテナンス)
- 常駐SE (お客様サイトに常駐して、顧客システムのメンテナンスをする)
- セキュリティーSE (セキュリティーに特化して、コンサル、開発、提案を行う)
- プリセールスSE (お客様に提案書を作る作業を営業とともに実施する)
カテゴリの詳細は担当顧客により大きく異なりますが、常駐SE以外はすべて、社内のオフィース又はデータセンターでのオフィースworkが主たる仕事場となります。
常駐SEは、お客様のデータセンターのビルの一角にオフィースをお借りして、毎日その場所に通勤することになります。
SEの仕事ってブラック?
SEの仕事はすべてお客様案件に直結しているため、スケジュールや技術的なトラブルにより、非常に大きな緊張とストレスがあることは、あります。
それと、担当するお客様のITベンダーに対しての態度も、ストレスを大きくすることがあるようです。
私の担当していたSE部門でも、家電大手のM社や、自動車大手のN社に派遣されたSEのうち何人かは1年ほどで、メンタルになって戻ってきました。会社というよりは、お客様のIT担当部長のキャラによるのかもしれません。
最近のSIプロジェクトでは、システムは通常、社内もしくは、社外のパッケージソフトウェアを使って、カスタマイズして使うということが、多いのですが、このソフトにバグがあったりして、本来の機能を発揮できないことがよくあります。
このような場合にストレスは最大限になるようです。自社のソフトでないので、簡単に治せないし、直さないと要件が満たされないというようなことが多発し、これが、長い残業や、休日出勤に結びついてきます。
大手IT企業SEはほとんどの場合、自分でコーディングやプログラムを自分でやるのではなく、外注先のソフトベンダーに任せます。
このソフトベンダーの技術力が低かった場合は、ストレスマックスになることが確実です。なんせ、お客様からみると担当SEがすべての責任をとるのですから
プロジェクトがこのような大きな技術的問題に遭遇し、大幅にスケジュールがずれるトラブルプロジェクトになると、メンバー全員が方針状態で仕事を長時間することになり、事がますます好転しなくなります。
こんな時にに登場するのが、”お助けSE”です。このSEは、通常”SUPER SE”とも呼ばれ、トラブル プロジェクトを渡り歩いて、短期間で集中的に立て直しを行います。
いうなれば、”神”のような存在です。ただ、メンタルの強さ、技術力の強さ、人をまとめる力、強靭な体力、すべてがそろっている必要があります。
こういうSEは数は少ないですが、SEとしての、昇進の階段を一直線に上がっていくかというと、必ずしもそうではなく、専門職として、長くSuper SEとしてのみ働くことを希望する人も多いようです。
よって、SEはブラックか?という質問に関しては、ブラックと思える職場は多いと思いますが、やりがいを感じることも多い職種だと思います。
SEのキャリアパスと将来性
SEの仕事は、会社の製品開発のためというより、顧客に直結した技術職です。
つまり、コストを考えると大手外資IT会社のSEより、外部ベンダーの方が圧倒的にコストが安いため、ソフトのプログラミングやコーディングの仕事は、外部におねがいすることがほとんどです。
つまり、自分でプログラミングする機会は少ないので、将来独立して、プログラマーとして生活することを目指すなら、大手外資IT会社のSE職は、あまり良いキャリアを積める場所ではありません。
その代わり、企業でしか使わないような、大きなパッケージソフトに触れることが可能です。
- ERPソフト (SAP)
- DataBase (Oracle)
- CRM (SalesForce)
- AI (Watson)
これらのソフトウェアに精通したスキルは 大手IT企業に転職するときに大きな経験として価値を発揮します。
大手外資系IT企業のSEの仕事が合う人、合わない人
働いている会社も、担当のお客様も大きな企業のため、そんなに簡単にやり方を変えることがありません。つまり、プロジェクトが変化してもやり方はそんなに変化しないのです。
それが、自分の仕事のやり方にマッチした人が大手IT企業SEに向いた人です。
将来は独立して、ベンチャーを立ち上げて、プログラミングやコーディングをして暮らしていきたいと思うような、純粋に技術志向の人には、物足りないと思われます。
根幹にある大手外資IT会社のSEの価値は、大型プロジェクトのプロジェクトマネージメントができることにつきるからです。
合わなかったらどうするの?おすすめのステップ、転職?
上記の現実に違和感を感じて会社(IBM)を去ったSEも数多くみてきました。
例えば、AWS(Amazon Web Service)や Sales Force Dot Com, CISCOには、数多くの元IBMのSEが転職している事実があります。
一時期、AWSでのプリセールス(当時約50人)のうち 半数は元IBMのSE出身とのうわさを聞いたほど、多くの人が転職しています。当然、転職時点で、転職先であるAWSについて彼らは、熟知しているわけではなく、それ以外の顧客との関係や 前述の企業APPのソフト経験を買われて、転職を実現した人がほとんどです。
ちなみに、AWSのように、新卒新人の雇用をしたことが一度もないというような、ベンチャーは数多く存在します。つまり、経験さえあれば、他の職種に比べて、かなり容易に転職先を見つけることができるようです。
最後に、まとめ
私の見てきたSEの中には、キャリアパスとして、営業の担当の部長になっていく人も少なくありません。逆に営業でキャリアを積み上げてきた人が、昇進でSEの担当部長になったという事例はほぼ、見たことがありません。
つまり、SEは技術的にも、顧客とのリレーションにおいても、プロジェクト マネージメントにおいても、非常に多くのことを学ぶことができる職種だと思われ、社内でうまく昇進できるようなら、可能性も非常に多い職種だと思われます。
IBMの場合、入社した社員のうち、退職までに、マネージメントという職域まで到達する人は、全体の10%程度だといわれています。つまり、90%の人は、給与面でもマネージメントの領域まで到達できないということです。
ただ、外資IT会社のSEの場合は、転職で他の外資系に行ける可能性も大いにあります。
自分のプログラミングやIT技術を磨いて、コーディング技術を身に着け、将来はフリーランサーや、自分で、ベンチャーをスタートさせたいという方には、あまり明るい職場、職種では無いかもしれませんが、大規模プロジェクトをマネージしていくという仕事を目指すなら、おすすめできる職種であることは間違いありません。
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